2010.02.17
調査/分析 歐陽 宇亮(株式会社ラユニオン・パブリケーションズ)
日本のドラマや映画、アニメは、30年ほど前から中国に入り始め、市民社会へ着実に根付いている。これらの大衆文化は、日中間の歴史認識の違いや領土紛争といった国家的・民族的な問題を越え、いわゆる文化的に「無臭」のものとして中国の人々に広く受け止められ、民衆の心をつかんで離さない。
中国で人気のある日本のドラマや映画、アニメは数え切れないほどある。日本のドラマは「日劇」と呼ばれ、一日のテレビ番組の中で目玉となっている。中国情報メディア「サーチナ」が2009年に調べた「中国人の好きな日本のドラマ」によると、『東京ラブストーリー』(中国語名:東京愛情故事)や『101回目のプロポーズ』(101次求婚)、『ひとつ屋根の下』(同一屋簷下)、『ロングバケーション』(悠長假期)など、90年代のドラマが軒並み上位にランクイン。80年代にさかのぼると、『おしん』(阿信的故事)が空前の大ブームを巻き起こした。近年では、『白い巨塔』(白色巨塔)や『大奥』、『サプリ』(恋愛維他命)、『医龍』、『渡る世間は鬼ばかり』(冷暖人間)などが人気だ。
映画では、『伊豆の踊子』(伊豆的舞嬢)や『ラブレター』(情書)、『おくりびと』(禮儀師之奏鳴曲)などが人気を誇っており、またアニメだとスタジオジブリの作品が神聖視されており、『天空の城ラピュタ』(天空之城)や『となりのトトロ』(龍猫)、『耳をすませば』(夢幻街少女)といった日本でヒットした作品は、中国でも熱狂的に愛されている。最近だと『らき☆すた』(幸運星)や『涼宮ハルヒの憂鬱』(涼宮春日的憂鬱)などのアニメもブームとなっている。
日本のドラマや映画、アニメの中国人ファンの間では、作品の舞台となった場所を直接訪れる「聖地巡礼」の旅が流行している。日本の作品ではないが、史上最大のヒットを飛ばした2008年末の中国の正月映画『非誠勿擾』(邦題:狙った恋の落とし方。)が道東を舞台としているため、2009年に北海道を訪れる中国人観光客が前年より倍増したという(北海道庁調べ)。また、大勢の観光客が『ラブレター』の舞台となった小樽に押し寄せており、ブームが去った今でもまだ「聖地巡礼」のため小樽を訪れる観光客が後を絶たない。
『東京ラブストーリー』の影響で、クライマックスのシーンが撮影された愛媛県松山市の梅津寺駅に多くの人が訪れ、ヒロインの真似をして駅の手すりにハンカチを結ぶというのも、ファンの間では有名な話である。『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(東京鐵塔:我的母親父親)の影響で東京タワーに憧れ、『ラブジェネレーション』(恋愛世紀)の影響でお台場とレインボーブリッジを訪れる中国人観光客も少なくない。アニメでも、『らき☆すた』の舞台となった埼玉県の鷲宮町に観光客が殺到するなど、「聖地巡礼」の勢いはとどまるところを知らない。
日本の各地域の自治体と観光業界にとって、この「聖地巡礼」のブームは、良い知らせに違いない。このチャンスをぜひ見逃したくないものだ。