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台湾の温泉地にみる、日式おもてなしの原点〜2011・日式 in 台湾(1)〜

2011.1.21
このシリーズでは、中華圏で良質な日本式サービスや製品の名称に冠せられる"日式"というフレーズを使用して、現地の日式事情をレポートします。

今年に入って台湾を訪れた際、現地の観光業者に「最近の台湾の温泉ブームはいつ頃から盛り上がり始めたのものですか?」と聞いてみた。

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台北市政府文化局が運営する「北投温泉博物館」

筆者の念頭には、北投温泉にオープンしたばかりの日勝生加賀屋や日式を売りにして最近活況を呈するホテルの事例があったのだが、彼らは意外そうな顔をして「強いて言えば、日本統治時代(1895~1945年)から台湾の温泉ブームはあったのですよ。」と答えた。もともと日本人が持ち込んだ温泉文化は当時から台湾に根付いていたのだが、国民の生活水準が上がって、より洗練された温泉施設が増え始めたので、それが目立っているだけですよ、と言うのが、彼らの見解だ。

確かに台湾には、日本統治時代の遺産も多く残っており、いま訪れても、ふと自分の生まれ故郷に戻ってきたかのような錯覚に陥ることが多い。しかし温泉文化に対する台湾人の思いは、決して日本からの借り物ではなく、"自分たちの"文化であるという深い愛着と自負を感じさせるものだ。

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温泉街の宿泊客に人気の、台湾の伝統歌劇

オープンしたばかりで活気に満ちた加賀屋のすぐ脇に「北投温泉博物館」という施設がある。大阪出身の商人・平田源吾が、台湾初の日式温泉旅館をオープンした地に、当時の公衆浴場を利用して建てられた、温泉文化のタイムカプセルだ。当時そのままで保存されている大浴場や、地質学的な背景、温泉成分の解説だけでなく、温泉をテーマとした当時の流行歌や映画も楽しむことが出来る。展示をひとつひとつ眺めていると、現地の人々が温泉を文化として捉え、残そうとしていることが理解できる。

日式の大広間では、台湾の伝統的な歌劇が演じられており、温泉の宿泊客で大盛況だ。台湾の人々に混じって、そのコミカルな芝居を見て、笑い、拍手をしているうちに、何かしら温泉文化の原点に触れたような気がしてくる。それは別の機会に日本の温泉旅館に泊まった際には感じられなかったものだ。

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フロントでご案内する着物姿の現地女性(礁渓温泉・礁渓ロイヤルホテル)

宜蘭県礁渓温泉の礁渓ロイヤルホテルは洋式の宿泊施設だが、随所に日式テイストを取り込んだ意匠が施され、それが人気を呼んでいる。フロントで宿泊客を迎える着物姿の現地従業員も印象的だ。ホテル主催のイベントも充実していて、毎晩ホールで開催される民族楽器のコンサートも素晴らしいが、子供たちを集めて開催される「DIY」が人気だ。ホテル従業員が、現地特産キンカンのシロップ漬けや、木材を使った工作を、子供を相手に「自分でやってみよう」と教えてくれる。山間の温泉地で暇をもてあます子供のための「もてなし」であると同時に、地元の生活に触れてもらおうという、地域密着のアイデアだ。

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子供に人気のDIY(体験教室)(知本温泉・知本ロイヤルホテル)

帰りの送迎バスで運転手が、工事現場を通りすぎながら「最近、大手ホテルチェーンがどんどん進出してきているんですよ。」と解説してくれた。「でもうちのホテルが今年も上位にランキングされているのは、DIYのような、従業員みんなで工夫してお迎えしているサービスがあるからだ、と思うんです。それを楽しみに毎年来てくれるお客様もいますからね。」

日式の洗練されたサービスとは違って見えても、その土地ごとの風土・文化、そして人柄で「おもてなし」する台湾の温泉文化は、確かに日本の温泉文化と通底している。それ以上に、久しぶりに帰った故郷で忘れていた感覚が呼び起こされるように、台湾には日式「おもてなし」の原点がまだ残っている気さえするのだ。


取材/細尾 文彦(株式会社ラユニオン・パブリケーションズ)

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