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なぜ『おもてなし』は中国人に伝わらないのか?(前編)

2010.11.29

株式会社パッセン
代表取締役 福井将二

中国人を『お客様』として敬うことができますか?

文明開化以降、西洋人に憧れ、アメリカに先導されながら成長してきた日本人。その歴史的な背景が原因なのでしょうか、欧米先進国を尊敬することは簡単でも、中国を始めとするアジア人を尊敬することが苦手という日本人がかなり多いように思います。

しかし『おもてなし』の原点とは、お客様を敬い歓迎する心を持つことのはずです。戦後アメリカ人は、それまでジャップと見下していた日本人の素晴らしさを認め、尊敬してくれたからこそ、日米がともに成長してきました。今は日本人が中国人の素晴らしさを認め、尊敬することで、初めて日中がともに成長できる、そしてアジア及び世界を引っ張っていくことが出来るのではないでしょうか?

『中国インバウンド』とは、単に巨大マーケットからお金を稼ごうという話ではなく、歴史的な時流の中で、日本がいま必要に迫られている壮大なテーマだと考えています。

上海で生活していると、外国人の日本に対する関心が、どんどん薄くなってきている印象を強く受けます。これは恐らく、海外在住の日本人ならほとんどの方が感じているのではないでしょうか?中国人の方が皆、未だに日本に憧れていると思ったら大間違いです。アニメ漫画やメイドカフェ、ゲーム文化のお陰で、学生の人気こそ高い状態を維持していますが、旅行代理店に貼ってあるポスターやパンフレットの中で、日本への旅行なんてほんの一部です。これは尖閣諸島問題が起こったからではなく、最初からです。

いま日本は、裸の王様になる寸前です。日本がチヤホヤされているアイドル時代は、既に終わっています。製造業のお株を韓国や中国に奪われ、労働者は減り続け、資源もない日本が、どうやって世界の中の地位を維持していくのか、その重要な選択肢が『インバウンド』なのではないでしょうか?

今こそ鎖国をやめ、中国に対してもアグラをかく姿勢を改め、マーケットは誰なのか、マーケットのニーズは何なのか、どうすれば日本が魅力的な国として認めてもらえるのか、真剣に考える時ではないでしょうか?このままではアジアを牽引するリーダーは、中国とシンガポールになってしまうという危惧は、海外に出ている多くの日本人が抱いているはずです。そして、それらの日本人の多くは、日本を捨てて海外を選ぶことも視野に入れていると思います。

中国人は、梅干しを見ても唾液が出ないことを理解していますか?

いま、日本のインバウンド業界に求められている最大の課題は、いかにお客様の心を理解し、その上で日本の魅力を的確に伝えることができるかに尽きると思います。

島国日本で育った私たちは、同じ常識や生活習慣の人たちと接することがほとんどです。日本に『おもてなし文化』が定着しやすかったのは、そのお陰ではないかと思います。常識が同じであれば、最初から相手が喜ぶツボを理解している訳ですから...。日本人客の集客と同じ感覚のまま外国人に訴求したとしても、来てくれるのは、ごく僅かな『日本マニア』の方だけになってしまいます。また、そのマニアの人数は日本経済の衰退とともに、確実に減っていくことでしょう。

特に相手が中国人となると、日本がこれまで観光の武器としてきた古い伝統文化も、現在のところは通用しません。そのほとんどが中国から伝来したものなのですから、当然と言えば当然です。この中国人旅行者は、なぜ日本に来てくれたのか、表面的なアンケート結果を鵜呑みにするのではなく、もっとコミュニケーションによって真の興味をあぶり出す必要があるでしょう。中国大陸の方々と、台湾、香港の方々を、同じ中国人として考えるのも、私から見ると有り得ない話です。

更に問題なことには、日本人の方に『中国人と日本人の常識や生活習慣は違いますよ!』といくらお話ししても、中国生活の経験がある日本人でなければ、大きく頷いてはくれません。相手がアメリカ人であれば、文化は違えども様々な概念が共通しているので、相互理解もしやすいと思いますが、中国大陸13億人の方々とは、勝手が違います。

中国人の方に日本の魅力や旅館の魅力をしっかりと伝達するために、また習慣の違いから来る無用なトラブルを事前に回避するためには、日本と中国の両方をよく理解した私共のような専門家によく相談されることをお勧めします。日本語が話せる中国人に聞けば簡単に分かりそうなものですが、実際はそうでもありません。お互いが当たり前、もしくは分かっていると判断している事柄は、なかなか表に出てきません。それが常識の違いの恐ろしさであり、中国での商品製造経験があればお分かりになると思いますが、中国人が良品と判断する商品が、日本人から見ると明らかに不良品ということが起こる訳です。

翻訳の世界でも、同じようなことが未だに起こっています。日本人向けの文章を、単に安いコストで中国語に翻訳すれば十分という考え方の間は、『さすがは日本の品質』と唸らせるような文章は中国に輸出されません。

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